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地域経済を取り戻すポイントは”バケツの穴”をふさぐことだった。「地域に希望あり」読書会レポート

地域経済を取り戻すポイントは”バケツの穴”をふさぐことだった。「地域に希望あり」読書会レポート

17年10月開催、第71回目となる読書会の課題書籍は『地域に希望あり』(岩波書店)。今回は特別に筆者である大江 正章(おおえ ただあき)さんをお招きし、直接ご著書の解説をお願いしました。

大江さんはコモンズという出版社を経営されながら、グローバルな視点で社会問題を考えるNGO団体「アジア太平洋資料センター」(通称PARC:パルク)の共同代表でもいらっしゃいます。日々ご多忙でありながらも、自ら各地域に出向いてのフィールドワークを大切にしているお一人。

すでに1980年代から食や地域などソーシャルのジャンルでたくさんの書籍を編集制作され、まだ今ほど有機農業やオーガニックといった概念が一般的ではなかった時代から、食・人・地域・自然といった物事の関係性をより有機的にしようと社会に問いかけていたパイオニア的存在です。

今回は『地域に希望あり』の製作当時、日本各地の農山漁村で実際に見聞きされた地域問題の共通意識についてお話を聞く読書会となりました。

昔も今も、多くの人が地方から都市へ移住します。その主な目的はやはり「仕事」。逆に言えば各地域に仕事さえあれば、つまり地域経済を健全に持続できるのであれば、移住することもないといえるでしょう。

枝廣先生がシェアしてくれたデータでは、国内約1700もの地方自治体のうち、人口3万人以下の自治体は927、つまり半数以上の自治体は”小さな”自治体。その927自治体の「人口」を合計すると、日本の人口のたった8%ほどでしかないにもかかわらず、なんと同じ927自治体の「面積」の合計は国土の48%にもなるのです。

「つまり1割以下の人口が、半分近い面積の日本を守ってくれてる」と枝廣先生が解説されるとおり、こうした数字を知ると地域の活性化は決して他人事ではなく、日本全体で取り組むべき社会課題であることが実感できるのではないでしょうか。

過去には、経済発展を最優先するために国の補助金・交付金を受け取り、それを元手に新たな公共事業を始める、あるいは企業を誘致してくる、といったことが盛んでした。しかしこれは「漏れバケツ理論」と呼ばれ、一時的に大きなお金が入ったとしても、すぐに地域外の企業や団体の元に流れてしまい、本来の問題解決からは程遠いことがわかってきたのです。

現在は多くの自治体で、地域の中でお金が回る、循環型の地域経済を考えること、バケツに入ってきたお金が漏れることなく活かされる方法を確立する方向に変わりつつあります。

それは「他人の基準に左右されることがなく自らの基準で生きること」と同意であり、人々の幸せの追求にも関わることだとわかってきた自治体が増えてきたのです。

大江さんは「全国の農山村、都市、市民活動、地域、それらの研究から未来の”希望”を考察している」と話し、実際にご自身が各地域でお会いになった方々の変化や生活感などを紹介してくださいました。

また、公のデータも共有し、毎年内閣府が行う世論調査において「農漁村地域への移住の興味」が高まっていることを紹介。特に2005年と2015年の比較では、20〜40代の男性、20代30代の女性の層で顕著に高まっていることにクローズアップされました。

主に子育て世代、社会の中心的世代といえる男女が、都市部で受ける「経済力」という恩恵よりも、地域に定住して安心できる「より豊かな関係性」を優先する傾向が高まっているとは、過去にない大変大きな変化と呼べることです。

特に2011年の東日本大震災が、都市部在住者を含めた多くのひとにとって価値観を見つめ直す機会となりました。以降。震災をきっかけにしたライフスタイルの変化や地方への移住といった話も珍しくなくなったといえます。

大江さんは、これまでの多くの調査や取材から、「幸せ」をこう定義していました。

「真の幸せとは、公正で環境を守る社会の実現によって、
 誰もが差別されずに、健康で文化的な生活を送れること」

いま多くの地方では、これまで作られていたことを尊重しながらも少しずつ社会を変えていこうという動きが出始めました。

地域住民たちが豊かな人間関係でつながれば、「食」や「エネルギー」といったライフラインも変化しやすくなり、人・食・エネルギーという暮らしのセーフティーネットが確立されていきます。

安心な暮らしの環境下であれば、経済性を優位とする都市部との争いも気にする必要はなく、より「寛容」になり、異なる年代や地域からの”よそもの”たちと共に健やかな暮らしが実現しやすくなる。そこに人の幸せを見た大江さんの解説はとても説得力がありました。

地方移住といっても地域によって実に様々な違いがあり、ひとつの成功パターンをそのまま反映できるような”魔法の法則”は見つけられていませんが、各地の前例はいずれも”見方を少しだけ変えてみた”という意識の変革から始まるようです。地元を誇りに思う「シビックプライド」も、実は今まで見逃していた小さなことから生まれると教えてくれました。

自らが望む暮らしの豊かさについて考える、そんな読書会となりました。

幸せ研の読書会は、幸せと経済のバランスについて考え学ぶ読書会ですが、課題図書を読んでいない人も参加可能で、誰にでも発見のあるイベントとして運営しています。ぜひお気軽にご参加ください。ご案内はこちらの幸せ経済社会研究所のページから!

(POZIインターンライター やなぎさわまどか)