日本が抱える多種多様な課題に正面から向き合いながら、人々が創造的を発揮できる「舞台」としての都市をつくる。そんな目的のもと活動しているクリエイティブ・シティ・コンソーシアム(CCC)の2017年度クリエイティブ・ミーティングに、POZIのメンバーで伺いました。テーマは、いま話題のSDGs。ミーティングは、一般社団法人Japan Innovation Network専務理事である西口尚宏氏の講演「SDGsをどう捉えるか」からスタート。
西口氏は、SDGsをイノベーションの機会と捉えるべきだと提言。SDGsが提示するのは「人類は、地球は、ここまで行こう」という到達ゴール。そのゴールと現状との差分で、変化の大きさ、つまりイノベーションの余地が特定されます。その差分はまた、ビジネスの機会と見ることもできますね。
日本での SDGsの扱われ方について、西口氏はまだまだ残念なレベルに留まっていると指摘。既存の事業をタグ付けし、整理した取り組みが多いからです。また、特定の目標に限定してコミットしているところも問題です。全ての目標がつながっているのがSDGs本来のあり方だからです。
また、17の目標だけでなく、169のターゲットまでブレイクダウンし、各セクターの役割とビジネス機会を明確にする必要性にも言及。さまざまなセクターが学び、つながるプラットフォームとして「SHIP」を紹介されました。
続いて、「SDGsについて考える」というお題で、国連開発計画(UNDP)の保田由布子氏、事業構想大学院大学の田中里沙氏、そして富士通株式会社の藤崎壮吾氏によるパネルディスカッションに。Japan Innovation Networkの西口尚宏氏によるファシリーテーションのもと、企業、そしてNGOの現場からのコメントを交えたトークが繰り広げられました。
いま日本の企業ではSDGsに対する関心が急速に高まっており、UNDPには多くの相談が寄せられているそうです。しかし、海外と日本では、SDGsの使い方に大きな違いが見られます。日本では過去の活動をタグ付けし、「だからいいことしています」という自己肯定に使われる一方、海外では、未来に対するコミットメントに使われる傾向が。自社の説明のためか、めざすべきゴールか。保田氏は、本来は、未来志向のために使われるべきだと指摘されました。
企業サイドからは、社内を巻き込んでいくコツについて。さまざまなステークホルダーを交えた対話の場をつくったり、長期的なメリットを発信したり…。地道な取り組みの繰り返しが成果につながり、他の部署から声がかかるようになるそうです。また、SDGsについてピンとこない人も、2030年にはどうあるべきか、という問いかけだと話がしやすいという話には、なるほどと思わされました。
こうしたやりとりを聞いて、西口氏は、SDGsの17の目標だけではどうしてもフワッとした話になりがちで、169のターゲットを通すと、どうすべきかを具体的に考えるヒントになるとアドバイスされました。
最後は、「多摩川流域およびプラチナトライアングルにおけるSDGs」というお題のもと、世田谷区長の保坂展人氏、川崎市副市長の三浦淳氏、株式会社ヴォンエルフの平松 宏城氏、そして株式会社風とつばさの水谷衣里氏によるパネルディスカッションが行われました。ファシリテーターは、株式会社三菱総合研究所の中村秀治氏。
まずは、多摩川を挟む世田谷区と川崎市の取り組みについて、保阪区長と三浦副市長それぞれのプレゼンテーションをお聞きしました。
今後、リタイア世代が増えたり、働き方改革が進んだりすることで増える「人の時間」をどう地域に生かしていくかが課題となってきます。二つの自治体では、「SDGs共同プログラム」を進め、シチズンシップを育むことをめざしています。また、人口規模の大きな地域の特性を生かして、都市と地方で人、モノ、お金、情報をつなぐという壮大なビジョンも提示されました。
社会課題の解決のためには、ソフト面のインフラも重要。人と人とのつながりにより、貧困と格差を解消するエコシステムのための「世田谷コミュニティ財団」についても紹介されました。
今後、少子高齢化が進み、脱工業社会へのシフトが求められる多摩川流域および、渋谷・自由が丘・二子玉川のプラチナトライアングル地域は、社会課題の先進地と言えます。SDGsをゴールにセクターを超えた取り組みを進めることは、世界に次世代のモデルを示すことにもなります。クリエイティブ・シティ・コンソーシアムの動きに、POZIとしても今後、注目していこうと思います。