環境破壊が進む地域で生きる人びとと、持続可能な社会をめざす日本企業の取り組みをリアルに伝えるドキュメンタリー番組、フジテレビ『環境クライシス』。
これまで2回放送され、ドイツ・ボンで開かれたCOP23(国連気候変動枠組条約第23回国際会議)の会場でも上映、学校でも教材として使われるほどの反響があったこのドキュメンタリーのパネル展示を、2018年9月10日から21まで、東急エージェンシー本社ビル「THE SPACE」で開催しました。
そして、パネル展示に合わせて、9月18日には番組スタッフである総合演出の高瀬敦さん(スタジオグリフォン代表)と、取材記者の竹田有里さん(環境ジャーナリスト)をお招きし、トークショーを実施。POZIプランナーの池上が、お二人に制作の意図や裏話、そしてこれからに向けての意気込みを聞きました。
前職のMXテレビで災害担当だった竹田さん。ニュースでは海外で起きている大きな災害について伝える機会がほとんどないことに疑問を持たれました。台風などの災害について知れば知るほど、その原因が地球温暖化による気候変動だということが分かってきた竹田さん。日本でも起きうる環境問題の現実を、報道ではなくドキュメンタリーとして伝えたいと思い、高瀬さんに相談されました。
もともと気候変動問題への関心が高かったという高瀬さん。その脅威が残念ながら確実に目の前に突きつけられるようになってきていることに危機感を感じていたこともあり、ドキュメンタリー番組の企画を決意されたそうです。
環境問題を訴えるテレビ番組はこれまでもたくさんありました。そんな中、お二人がフォーカスしているのが「人」です。CGやナレーションで高所から説明するような内容ではなく、共感で伝わるドキュメンタリーとしてつくられているのが『環境クライシス』なのです。
環境破壊で真っ先に被害を受けるのは、少数民族など、社会の底辺にいる人びと。どんな過酷な環境に置かれていても、人はたくましく生きている。子どもたちは笑っている。高瀬さんは、「辛い状況を、辛く描きたいわけじゃない。辛い状況でも、人間や風景に美しさを見出して、伝えていきたい」と強調されました。
命の危険にさらされるような現場や、何人もの通訳リレーを通さないとコミュニケーションできないような異文化での取材は、聞いているだけでもハラハラさせられます。そんな大変な苦労を経て、インドの端やアルタイ山脈の奥地といった、簡単には足を運べない地域の暮らしがリアルに伝わる映像になっているのですね。
『環境クライシス』のもう一つの特徴は、日本企業の取り組みを織り交ぜたコンテンツに仕上げているところ。竹田さんは、日本の企業は気候変動の対応策・適応作が進んでいるので、その努力や技術をもっと多くの人に知って欲しいと話されていました。企業の取り組みの紹介も、他の番組とはひと味違います。技術的な説明に終わらず、担当の方の思いや、製品・サービスを利用する人の姿などがドラマティックに伝わってきます。
今後テーマとして取り扱っていきたいのは、脱プラスチックを国内林業の再生とつなげる取り組みや、水害対策など。身近な取り組みから世界的な問題に触れる内容にチャレンジしたいとのこと。
幅広い人が目にする民放のフジテレビで流れる番組だからこそ、感動があり、考えさせる映像を届けたいという高瀬さんと竹田さんの思いが溢れる熱いトークショーは、たくさんの質問が寄せられた質疑応答ののち、お開きとなりました。
(POZIプランナー 丸原孝紀)