2017年の9月に行われた読書会の課題図書は、哲学者である内山節さんの著書「半市場経済 成長だけでない『共創社会』の時代」。
「半市場経済」、気になる言葉ですね。いったい、何が半分なのでしょうか。ワクワクしながら、枝廣先生のお話に耳を傾けることにしました。
内山節さんの提唱する半市場経済、それは、市場を活用しているという点では市場経済ではあるものの、活動の目的が、よりよき働き方やよりよき社会をつくろうとする経済のかたちです。経済成長や利益の拡大を目的とする市場経済とは、目的のところが大きく違うのですね。
そもそも経済は、もともと利益のみを追求するものではありませんでした。古典的な経済学は「何のために経済は存在するのか」「人は何を実現しようとして経済活動をしているのか」という市場経済とは異なる思想を常に内蔵してきたのです。
それが大きく変わったのが戦後の高度成長期。労働が人間の営みという性格を失い、経済の目的が競争になり、持続可能性という視点はなくなりました。経済成長を市場命題とするために人が失ったのは、コミュニティや地域との「縁」。
その縁が切れてしまい、人は勤め先としての企業、社会保障の担い手としての国、そして消費者としての市場との縁で生きるようになっていきます。いまや終身雇用も社会保障も危うくなってきているので、こうした縁も頼りないものになってきているように思います。
成長の限界が明らかになってきている今、社会には二つの傾向が見られます。まずひとつは、高度成長期の縁がこれからも続くことを求める傾向。もうひとつは、そこから離脱して新しい縁のあり方を模索する傾向です。どちらに未来があるのかは、明らかですよね。
今の若い世代は、経済成長が幸せの基盤ではないことや、企業社会での労働が人間を幸せから遠ざけていることに気づいているのです。それは、大人たちが身の丈以上の欲望を満たすために賃労働のために自分の時間を犠牲にして働く様子を見てきたからなのかもしれません。
高度成長経済から半市場経済へのシフトを実現する社会起業家たちの目的は、単なる利益ではありません。社会デザインと経済デザイン、そして自分たちの生き方のデザインを一体的に構想することで、新しい社会の想像をめざしているのです。
経済の展開と社会の創造が一体化しうる経済のかたちを発見すること。代替可能な企業のパーツとしてでななく、自分の価値が実感できる関係性の中で働くこと。そのためには、価値の転換が必要です。
価値というものは共有されたはじめて価値になります。新しい価値をかたちにするビジネス。そのあり方の例として、イーズ研究員の新津尚子さんが「労働者協同組合」を紹介されました。それは、みんなで出資・経営・労働を担い、運営する組織です。イーズのホームページで、アメリカのグリーンズボロやスペインでの取り組みが紹介されているので、ぜひご覧くださいね。
暴走した経済により壊れかけている世界の中で、誰もが幸せに生きる社会をつくるために。いまいちど、経済とは何か、労働とは何かを問い直す必要があると考えさせられた読書会となりました。
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