ホーム幸せ経済社会研究所希望は、現実を見つめることから。「未来の年表 人口減少日本でこれから起きること」読書会レポート

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希望は、現実を見つめることから。「未来の年表 人口減少日本でこれから起きること」読書会レポート

これから、どんな問題が、どれくらい大変になってくるのか。持続可能な社会をつないでいくためには、そのあたりをきちんと把握しておくことが大切ですよね。2017年11月の読書会では、日本のこれからを衝撃的に展望した「未来の年表 人口減少日本でこれから起きること」を課題図書としてとりあげました。

東京を拠点としながら、島根県の海士町や北海道の下川町、熊本県の水増集落と、地域でも積極的に活動されている枝廣先生は、地方では人口減少の影響をひしひしと感じられるとのこと。東京も、オリンピック以後はガクッと大変になると予測されています。

2015年発表の国税調査で確認された人口減少。2016年の年間出生率は初めて100万人を割り込みました。日本の人口が急増したのは明治維新の頃から。3400人だった人口は100年間で3倍となり、今後100年間で3分の1に。急激に増えて、急激に減るのですね。

実は日本は戦後から一貫して少子化傾向にあったのですが、平均寿命が延びたため人口は増え続けたため、その問題が覆い隠されることになったのです。枝廣先生が研究されている「システム思考」で言うところのディレイ、原因と結果の時間差が大きいため、手を打つことができたときに打たなかったことがいま響いています。

人口減で起きる大きな問題のひとつは、労働力の問題です。2016年の段階で労働力人口は6,648万人いますが、それがこの50年で約4割減少し、4,000万人弱に。AIと外国人でまかなうという考えもありますが、今後若年層が減ってくることでAI開発のスケジュールも停滞する可能性があり、外国人の受け入れ体制に課題を抱える現状では厳しいと言わざるを得ません。また、高齢者の定義を変える対策も考えられています。現在は64歳が定年の年齢となっていますが、それを74歳まで引き上げるのです。しかし、これからは後期高齢者が増えて行くので、働ける高齢者の人口も減っていくことになるので、根本的な解決とは言えません。いまと同じ人口をキープすることを目的としない、縮小社会を前提とした賢い変化「スマート・デクライン」の発想が求められます。

人口の増減の鍵を握るのは、出産年齢の9割以上を占める20代、30代の女性。いまの日本社会では、仕事が忙しくて出産の適齢期を逃してしまう女性も少なくありません。働き方に関しては、ともすると誰が悪い、ここが悪いといった議論になりがちですが、日本全体として何を理想とする社会にしていくかを、もっとたくさんの人がいろいろなことを感じて、考えていく必要があるのではないでしょうか。

人口の減少は、インフラ整備にもかかわってきます。介護や医療の負担が増え、収益を生み出す人口が減るダブルパンチの中、戦後からつくってきた重厚長大なインフラを維持していくことができるのか。財源は減っていくのに、やらないといけないことは増えていく。この乖離はこれからどんどん大きくなっていきます。政治家は票が離れることを恐れて負担増について語らず、官僚は自分が役職にいる間に責任が持てることに邁進する傾向にあります。現世代だけではなくて、その先のことを考えてほしいと有権者が言えるかどうかが、変化の鍵を握ります。

人口減少は、いまは地方で大きな課題となっていますが、これから深刻になってくるのが都市部、特に東京です。高度成長期に地方から移り住んだかつての若者たちが急速に高齢化するのに加え、息子や娘を頼りに高齢者がたくさん流入してくるのです。いま大都市はビジネスと消費が中心の街づくりをしているため、介護の基盤整備がかなり遅れています。高齢者が増え、働く人が減ることで税収が増え、行政によるサービスもどんどん削減されていくでしょう。人口減の規模も大きく、また地方より遅れてくるために悪い影響が出始めれば長引くことが懸念されます。

本書ではその対策のひとつとして著者は「社会保障費循環制度」を提案しています。生涯を通して利用した社会保障サービスのうち、公費で贖われたものを死亡時に国に返還してもらい、それを少子化対策にするという仕組みです。本書には載っていませんが、人口減少がすでに深刻になっている地方ではさまざまな取り組みが行われています。コンバクトシティ、立地適正化計画、政策空き家、地域運営組織など。国民に最低限のお金を配り、もっと欲しい人は働くという仕組み、ベーシック・インカムも注目されています。

人口減少という未来は、もはや避けることはできません。目先の課題に取り組むことはもちろん大切ですが、長期的な傾向を踏まえて、動けるときに動いておかないと、個人も社会も厳しいことになりそうです。そのためにも、ちょっと立ち止まって、ゆっくり考えてみる時間が必要かもしれませんね。

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(POZIプランナー 丸原孝紀)