いま世界を席巻しているグローバリズムや貨幣経済の次に訪れる社会では、お金や情報がどのようにやり取りされるのか。
この実に興味深いテーマについて、内田樹さんと岡田斗司夫さんというこれまた興味深いお二人の対談をまとめたのが、今回の課題図書「評価と贈与の経済学」です。
まず、岡田斗司夫さんの「評価経済社会」について。 特にリーマンショック以後、既存の経済システムは信頼を失い、これまで最大の貨幣的利益に向かって邁進していた社会の構成員が、最大の社会的評価に向かって邁進するようになる傾向がみられます。 新しい社会の競争は、「どれだけ有名になれるか」、「どれだけ高評価を集められるか」をめぐる争いになるのです。
これからの企業は評価資本がなければ誰も雇えず、商品も売れず、株すらも売れない状況になりかねません。 評価経済社会における企業は評価資本を投資して、より多くの、より良質の評価をめざすようになります。実態よりもイメージや、経営者のキャラクターが経営を左右する傾向というのは、確かにありますね。海外でいうと圧倒的なブランドイメージを持つアップルや、孫さんという社長の言動が注目されるソフトバンクなどは評価資本で存在感を持っていると言えるのではないでしょうか。
そして、内田樹さんが提唱する「贈与経済」について。 ひととおり生活やステイタスに必要なものは行き渡った社会では、貨幣によって「交換したいもの」は少なくなっていきます。そしていまや、金融商品が多く取引される「金で金を買う」時代に。 本来の使い道を失ったお金を、これからの社会のために有効に使う ひとつの方法が、いまだ身体的需要が満たされない人たちに贈与する という「贈与経済」です。 交換の運動を起こすためという、貨幣本来の役割を取り戻すために、次世代に回す。その要件としては、自分より弱い立場の人たちを含む相互扶助的なネットワーク、資本を持つ人が「持ち出し役」であることを楽しむような成熟した市民社会が必要になってきます。
格差が社会不安の種となっている今、こうした贈与の仕組みや、従来の経済社会とは異なるコミュニティはますます必要とされているように思います。 また、これまでは成長を続ける経済という前提があったおかげで個人が他人とかかわらずに安全に暮らすことができましたが、経済が不安定になることで、より一人ひとりが助け合うことが求められてくるのではないでしょうか。
いずれの経済のかたちも、まだ仕組みとして確立しているものではありません。しかし、社会の大きな変化に柔軟に対応していくために、自分はどのようなコミュニティをつくっていくか、どのような人や組織、土地とつながりながら生きていくのかを考えておきたいものですね。
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