持続可能な社会の実現に向けてNGOと企業が協力する機会を推進する、「NGOと企業の連携推進ネットワーク」。その参加団体・企業のメンバーがともに学び合い、対話する場である定例会では、2020年度のテーマを「COVID‐19時代の社会的リスク」として展開していきます。
連携推進ネットワークでは、「社会的リスク」を、国連グローバルコンパクト10原則における4分類である「人権」「労働」「環境」「腐敗防止」を切り口に、4回にわたって定例会を開く予定です。その第1回、「人権」についての定例会が、6月23日にオンラインで実施されました。当日の参加者は59名。新型コロナウイルスをめぐる動き、そして人権に対しての関心の高まりがうかがえます。
まず最初に登壇されたのは、公益社団法人セーブ・ザ・チルドレンの堀江由美子さん。2012年に策定された「子どもの権利とビジネス原則」をもとに、職場、市場、そしてコミュニティや環境における企業の人権リスクについて説明されました。
新型コロナをめぐっては、経済活動が止まったことで失業者が増えていますが、その影響で児童労働や家庭内暴力が増えるなど、子どもの人権が侵害される状況が起こっているとのこと。大人に問題が起こったときには、その先にいるであろう子どもへの影響を常に考える必要があるのですね。
SDGsの達成期限まであと10年というタイミングでの、新型コロナによる劇的な社会的変化。企業は、今まで以上に世界の人々の人権に向き合い、サステイナブルな行動を推進するために、NGOと連携していく必要があります。
続いて登壇されたのは、認定NPO法人BHNテレコム推進協議会の富野岳士さんと渡辺栄一さん。ミャンマー事業を例に地元の団体とともに、現地企業からなる商工会議所などとも関わりながら防災システムを構築、地域展開された事例を紹介されました。また、土橋康輔さんから、支援現場の詳細について追加で説明をしていただきました。
当初は、防災のための情報伝達システム構築を目的にしていましたが、ハザードマップの作成、住民の保健衛生意識の向上など住民のニーズに基づいて事業が展開されてきました。この知見が、新型コロナの状況下でも住民の感染防止のための活動にも活用されているとのこと。限られた人だけでなく、地域に住む人の命が守られるということも、人権として大切な視点です。
社会的な課題を抱える地域の細やかなニーズをくみ取ることができ、現地とのたしかなネットワークを持つNGOと、技術やリソースを持つ企業。その二者ががっちり連携することで、具体的な解決策を生み出すことができるのだと思わされる事例でした。
そして、最後に登壇されたのは、JANICの若林秀樹さん。「新型コロナ時代になぜ『人権』が必要か」というテーマでお話をされました。
いま、コロナ禍を理由に国家による自由権の制限が正当化される動きがあります。それが行き過ぎると人権が大きく制限される恐れも。このような動きに対し、企業はしっかりと異議を表明する必要があります。株主至上主義からステークホルダー至上主義へと意識が変わりつつある今、経営者、そして企業で働く一人ひとりも、市民として人権への意識を高めていく必要があるのですね。
人権についての新しい動きとして、アメリカにおけるBlack Lives Matterについても触れられました。黒人への差別に対して、有名人や企業が正々堂々とモノ申すようになっています。人権の侵害に対して見て見ぬふりをすることがリスクになる時代が来るのかもしれません。
定例会は、JANICの理事もつとめるNTTデータの金田晃一さんのファシリテーションにより、さまざまなNGOや企業の方から意見や質問が飛び交いました。この定例会は、参加者一人ひとりが人権を自分の団体や企業の問題として考える機会となったのではないでしょうか。
(サステナビリティ・プランナー 丸原孝紀)