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Refill Japan オンラインカフェVol.1 「水道水に感謝! 蛇口の向こう側、地球の向こう側」レポート

Refill Japan オンラインカフェVol.1 「水道水に感謝! 蛇口の向こう側、地球の向こう側」レポート

 

地域の人たちが主役の給水スポット・プラットフォーム「Refill Japan」

新型コロナウイルスの影響が続き、感染予防が重要視されています。そんな中、すぐに安全な水で手を洗うことができる環境が整っていることは大変ありがたい事だと気づかされます。

Refill Japanオンラインカフェ第1回は、この水道水のありがたさに焦点を当てて行われました。MCは水ジャーリストの橋本淳司さん。国内外で安全な水道水を届けるために働く方々に現場からの生の声を伺いました。

まずはじめに、水Do!(スイ・ドゥ)ネットワーク事務局長の瀬口亮子さんより、水Do!の活動についてお話しいただきました。

水Do!とは、ペットボトル等の使い捨て(ワンウェイ)容器入りの飲料の利用を減らし、水道水の飲用を推進することにより、環境負荷の低減、地域の水資源保全、人に優しいまちづくりを促進するキャンペーンです。2010年6月に国際環境NGO FoE Japanの活動として開始、2014年度より水Do!ネットワークとして活動を拡大しています。

水Do!は、3つの目標を掲げています。まず一つ目は、環境負荷を減らすこと。リサイクルすれば大丈夫だと思われがちなペットボトルですが、作ったり運んだりする中でたくさんの資源とエネルギーが使われており、利用自体を減らしていく必要があります。次に、地域の水をまもること。水源に思いをはせ、守ろうという気持ちを育む取り組みを行っています。最後に、人に優しくうるおいのある社会をつくること。家の中だけでなく、外出先でも手軽に水道水を飲める環境を整えることは、魅力的な街づくりにもつながります。

具体的な活動内容としては、国内外の給水スポットの調査やイベント会場等での普及啓発活動、国内外の給水スポットの紹介などを行っています。そして昨年5月には、給水スポットを広げるための市民、自治体、企業等の協働プラットフォーム、Refill Japanを立ち上げました。地域の人々が主役となり、地元の給水スポットを発掘・開拓するとともに、日本初の水道直結式仮設給水機をイベントで導入するなど、新たな試みに注目が集まっています。多くのメディアにも紹介され、今後さらに活動の幅を広げていくそうです。

 

良質な水道水を届ける、大阪市水道局の高度浄水設備

次に、NPO法人水政策研究所理事の北川雅之さんより、大阪市の水道事業についてご説明いただきました。

大阪市では、かつて水源の琵琶湖・淀川水系の汚染などの影響で、水道水にカビ臭などの異臭味が毎年のように発生し、トリハロメタンなどの微量有機物も問題となっていました。そこで、より安全で良質な水道水を給水できるよう、平成4年度より高度浄水施設整備事業を開始し、平成12年3月より市内全域において高度浄水処理水を供給しています。

浄水場は、都市によっても大きさや手法が違ってくるそうです。今回北川さんからは、大阪市の高度浄水施設の仕組みについて、写真を交えながらお話しいただきました。近頃は浄水場の見学の許可が出なくなってきていることもあり、普段は見られない仕組みを知ることができる大変貴重な内容でした。

 

水道水をぐっと身近にする、大津市企業局の取り組み

続いて、大津市企業局経営戦略室の仁志出彰子さんより、大津市企業局の政策についてお聞きしました。

滋賀県の県庁所在地である大津市は、琵琶湖の水を水道水の水源として使い、使った水を再び琵琶湖へ還すという循環が行われている地域です。近年、琵琶湖の深刻なプラスチックごみが問題になっているとのこと。その問題を解決すべく、マイボトルを持ち歩くライフスタイルの提供、水道水のイメージ革命など、戦略的広報活動を行っています。

一例として、便利になれてしまった大人、マイボトルを持っていない大人をターゲットにしたチャーミングな施策を紹介されました。それは、子どもたちの描いた絵が入ったマイボトルを、親などの大人にプレゼントするというもの。卒園制作で子どもから贈られる「世界にひとつだけのマイボトル」は、使ってみようという気持ちになりますし、とても捨てられないですよね。

他にも、水道水でお茶を淹れる楽しみを広報誌で紹介したり、ハーブウォーターづくりのイベントなども行ったりもしています。「当たり前に出る水道水に感謝する」という思いを大切に、「心に響きやすい情報発信」をいつも心掛けているとのことでした。

 

清潔な水が使えない7億8,500万人たちのために、ウォーターエイド

最後に、特定非営利活動法人ウォーターエイド・ジャパン事務局長の高橋郁さんより、「すべての人に水・衛生を WaterAidの活動」についてお話しいただきました。

WaterAidは、「すべての人が水と衛生にアクセスできる世界」をビジョンに掲げ34か国で活動しています。蛇口から安全に飲める水が出てくる日本ではなかなか意識されづらい問題ですが、世界で清潔な水を使うことができない人は約7億8500万人、トイレを使うことができない人は約20憶人、約40%の家庭・約43%の保健医療施設では石鹸と水が使える手洗い設備がないそうです。

水が使えない・衛生環境が整っていない要因は、カースト等による差別、維持管理の仕組みがないこと、貧困層が利用できる金額ではないことなど、地域・場所・人によってさまざま。こうした問題を解決して「すべての人に水・衛生を」を実現するためには、各国・各地域に適した仕組みを作る必要があります。

WaterAidの活動内容としては、村水衛生委員会とコミュニティボランティアを対象にトレーニングを実施したり、地下水涵養と雨水活用設備の導入、既存の給水設備の修復などを行ったりしています。

特に今は新型コロナウイルス感染症の問題もあり水での手洗いが必要であるため、医療保険施設や街への簡易的な手洗い設備の設置、適切な衛生習慣の普及促進、手話による手洗い促進動画など、脆弱層の支援・国や地方自治体への働きかけなどにも取り組まれているそうです。また、きれいな水を使えることは当たり前の権利、ということを地域の人々自身に理解してもらうことも大変重要であるとのことでした。

 

ひと手間で、もっとおいしく安全に飲める水道水

登壇された方々のプレゼンの後で、参加者からの質問を交えたディスカッションも行われました。質問のひとつに、水道水の塩素処理は健康に影響がないのかというものがありました。これに対して水道局のお二人から塩素処理はむしろ安全な水を届ける上で欠かせないものであり、塩素臭が気にならないようこまめに調整されていること、それでも気になる場合は煮沸やレモンでの中和が効果的である等のお答えがありました。ひと手間でさらにおいしく安全に飲むことができる方法、ぜひ生活に取り入れてみてください。

今回のオンラインカフェでは、水にかかわる様々な立場の方からお話を伺いました。日本の整備された水・衛生環境に感謝するとともに、今後もその環境を守っていくために今できることについて考えるきっかけとなりました。

これからのRefill Japan オンラインカフェにも期待が高まります!

(サステナビリティ・プランナー 井上慶美)