今回の課題図書は、「経済は、人類を幸せにできるのか」。以前に課題図書となった、「経済と人類の1万年史から、21世紀世界を考える」の著者、ダニエル・コーエン氏が、幸福をさまざまな角度から検証する、ユニークな一冊です。
読書会は、本書から枝廣先生がこれからの経済と幸せを考える上でヒントとなるところをピックアップするかたちで進められました。
(1)目先の楽しさに溺れない
あとで後悔すると分かっているのに、目の前の楽しみを優先させてしまう。人間とは、どうもそういう生き物のようです。
幸せをあらわす英語には、「happiness」と「well-being」の二つがあります。簡単に区別すると、前者は短期的な幸せ、後者は長期的な幸せを意味します。「well-being」というのは日本ではあまり聞かない言葉ですが、紐解くと、「well(良い)+being(在ること)」つまり、「良く在る」ということ。長期的に良い状態でいるための本質的な幸せをつかむためには、目先の楽しさはほどほどにしたほうがいいのかもしれませんね。
(2)他人との比較をしない
人はとかく、自分と他の人を比べてしまいます。困ったことに、幸福感は比べることで左右されてしまうのだそうです。特に、地位や資産といった外から見える幸せは気になるものですよね。幸せには、外から見えるものだけではなく、人とのつながりや目標を持って生きることなど、内面的なものもあります。
あわただしい日常の中では忘れてしまいがちな内面的な幸せを実感するヒントとして、「ピークエンドの法則」は覚えておいたほうがいいかもしれません。人の記憶に残るのは、最も強烈な瞬間である「ピーク」か、終わる瞬間「エンド」であると言われています。ピークはなかなかコントロールできませんが、節目節目や1日の終わりに、幸せだったささやかな瞬間を振り返ることだけでも、毎日の幸福度は変わってくるかもしれません。
(3)慣れすぎないように
人間は高い適応能力をもっています。どんな状況にも、すぐ慣れてしまうのですね。困ったことに、幸せにも慣れてしまいます。たとえば給料が上がったとします。そのときは幸せを感じるのですが、やがて上がった給料での生活に慣れてしまいます。当たり前のようになってしまったことも当たり前と思わず、毎日感謝の気持ちをもって、新鮮な気持ちで生きる。そうして、慣れないことが、幸せを長続きさせるためにも大切なのですね。
(4)エンディングに、幸せを
なるほどと思ったのが、幸せと年齢の関係です。調査によると25歳から50歳までの間に幸福感は下がっていき、その後再び上昇し、70歳になると30歳と同じ、80歳になるとなんと18歳と同じ幸福度になるというのです。これは多くの人が働き、家族を持ったりすることで責任が大きくなったり、自由が制約されるようになることと関係がありそうです。いま日本では年金や福祉の制度が揺らぎ始めていたり、お年寄りが邪魔者扱いされたりと、何かと年を重ねることが不安な状況ですが、幸福度を高めるためには人生の終盤を安心して過ごせるような社会にしていく必要があるのかもしれません。
(5)働くという幸せ
心理学者のマズローが唱える欲求段階には、生理的、安全、所属、承認、自己実現の5つのステージがあります。この全てを満たすのはなかなか難しいように思えますが、日々のお仕事のことを考えてみてください。「働く」ということは全ての欲求を満たすことができる、ほぼ唯一の手段とは言えるのではないでしょうか。生活の糧を得るためだけでなく、満ち足りた人生のためになると思うと、仕事に向き合う姿勢も変わってきますね。
(6)人は弱いから…
「明日1万円もらうか、1年後に2万円もらうか」。そんな質問をされたら、あなたはどう答えますか。今と未来の比較となると、今をとってしまう人のほうが多いそうです。不確かな未来よりも、今の幸せをとるということでしょうね。目先の欲にとらわれやすいことがわかっているのなら、最初からそこに近づかないことが大事。たとえば12時を過ぎたらご飯を食べないとか、月にこれだけしかお金を使わない、といったルールを自分に課すのはどうでしょうか。長期的な幸せを見つめるために、短期的な幸せという選択肢をなくす。快楽を得る為の人生から幸せに生きる人生へのシフトが、そこから始まるかもしれません。
最後に枝廣先生は、自分のため、次世代のためにこれから幸福に生きるために意識しておくことを「幸福のための10条件」という形で読書会の参加者それぞれでまとめて皆で考えていきたいと今後の話をして会は終わりました。みなさんもこれを機に、自分の真の幸福のためにも10個のルールをつくり、実践してみるのも良いかもしれませんね。
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