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みんなで使えば、社会はもっとフラットになる。「シェアリングエコノミー」読書会レポート

今回の課題図書は、「シェアリングエコノミー― Uber、Airbnbが変えた世界」。 シェアリングエコノミーとは、物・サービスなどを、多くの人と共有・交換して利用する社会的な仕組み。最近身近になりつつあるカーシェアリングなども、そのひとつです。

読書会は、シェアリングエコノミーになぜ関心が高まっているのかを参加者内で共有することから始まりました。資産を有効に使いたい、人とのつながりを感じたいなど興味の始まりは人それぞれ。本書を通じて、シェアリングエコノミーの流れを促進する背景は何か、それが社会に与える影響、そして、私たちの社会が直面する問題について考えていく流れになりました。

皆さんもご存じの通り、地方にも浸透しているAirbnbなど、個人間のシェアリングビジネスは色んな場面でおなじみになっていますが、最近では企業間のシェアリングビジネスも広がっています。ミニマリストといった言葉の流行に表されるように、現代の若い人にはものを持たない人が増えています。所有価値よりも使用価値を重視する流れに価値が変わりつつあるのですね。

シェアリングエコノミーを考える際のキーワードの一つとして挙げられるのが「P to Pプラットフォーム」。これはpeople to peopleといった、個人間でやり取りを行う環境のことを指します。たとえば翻訳の場合だと、エージェンシーを介さずとも直接翻訳者を探すようなかたちです。中抜きによるメリットがあるからこそシェアリングエコノミーは発展していると言えますが、それにはネットの存在が欠かせません。

ネットを通して人に仕事を依頼する。これは知らない他人に任せるということでもあり、信頼をどう担保するか、が課題となります。たとえば、ネットショッピングで成長したアマゾンでは、商品や売り手に対して星がいくつ付いているかといった評価が指標になっています。売り手と買い手に上下の関係がなく、互いに評価する仕組みですね。ここからは、商業価値をも大衆が作り出すようになりつつある変化が見て取れます。

ビジネスの歴史を振り返ると、産業革命までは個人対個人でビジネスが行われていました。コミュニティ内で信頼をベースにお金のやり取りが行われていたのですね。産業革命後になって一般的になった企業を中心とする経済の歴史は、実はまだ浅いもの。シェリングエコノミーの台頭によって、企業中心の経済は小さくなっていくかもしれません。産業革命によって経済は大きく成長しました。一方で、資産の蓄積が目的になり、人と人とのつながりが希薄になってしまった面もあります。シェアリングエコノミーは、本当の豊かさをもたらす経済の在り方を見直すチャンスにつながるかもしれません。

シェアリングビジネスには、他人に部屋を貸したり、約束の時間に返却場所へ訪れたりと、信頼が成り立つ環境が不可欠。市場経済というより、贈与経済に近いと言えるかもしれません。ビジネスホテルよりカウチサーフィン、タクシーよりウーバーという流行には、「誰かと話をしたい」といった社会的なつながりへの欲求があるのかもしれませんね。

さらに、ビットコインの誕生にも、こうした大衆の経済を活性化させる可能性を見出せそうです。人々の信頼によって価値が定まる通貨の存在によって、大衆が社会を動かす力を取り戻す時代が来るかもしれません。上下の関係が無く、平等な評価がベースとなるビジネススタイルによって、シングルマザーや貧困層が稼げるようになるなど、よりフラットな社会構造への転換も期待できます。さらに、GPSや移動手段などの技術の進化によって、それまでローカルに限定されていた小商いがグローバルビジネスになったり、必要な時に必要な人に仕事を依頼できたりするなど、オンデマンドでより個人に合った働き方が増えることも考えられます。

とはいえ、信頼とは不可視で不安定なもの。労働法など規則の取り決めもまだまだ整っていないことも事実。そうした働き方を支えるシェアリングを基盤にした都市作りが必要になってきます。市役所の会議室がシェアできるソウル市など、国や自治体がシェアリンシティづくりを主導する例も増えてきています。

今後人口が減少していく日本では、シェアを中心とした発想はモノや場所の効率的な活用に繋がるうえ、人と人との交流を生み出すことができ、より豊かなくらしづくりに寄与することが期待されます。地球の限られた資源やエネルギーを有効活用するためにも、遊休資産のシェアという観点は今後さらに重要となるでしょう。

幸せ研の読書会は、課題図書を買っていなくても、読んでいなくても発見のあるイベントです。ぜひご参加ください。ご案内はこちらの幸せ経済社会研究所のページから!