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世界で注目の「人と自然がともに幸せになる経済システム」は、日本でも広がっていくのだろうか。「社会的連帯経済入門」読書会レポート

世界で注目の「人と自然がともに幸せになる経済システム」は、日本でも広がっていくのだろうか。「社会的連帯経済入門」読書会レポート

2018年5月の読書会は、廣田裕之著「社会的連帯経済入門」を課題図書として取り上げました。資本主義の経済システムに代わる経済のかたちとして世界中で展開されている「社会的連帯経済」。今回の読書会では、ヨーロッパやラテンアメリカ、アジアでのさまざまな事例をみていきました。そして会の後半には、著者の廣田先生にもSkypeで参加していただき質疑応答を通して、日本での今後の展開についての考察もおこなっていきました。

まず、社会的連帯経済の定義について。社会的連帯経済というのは、「社会的経済」と「連帯経済」を合わせたような経済のかたちです。ここで言う「社会的経済」というのは、非資本主義的な組織による経済で、具体的には、協同組合やNPO、財団や共済組合など。そして「連帯経済」というのは、もっと公正で持続可能な世界をつくろうという動き、具体的には、フェアトレードや地域通貨、マイクロクレジットのような経済的取り組みのことを指します。

続いて社会的連帯経済の歴史が、世界各地の事例に沿って解説されました。まずフランスでは、19世紀には空想社会主義理論をもとにした数多くの実践例が登場し、1901年には早くもNPOが合法化。2014年には社会的連帯経済法として法律でも認められ、大規模な信用組合や共済組合が多く存在するようになりました。いまやフランスでは社会的連帯経済は、女性や高齢者を中心に約14%もの雇用を創出しているそうです。そしてスペインでも19世紀にはすでに協同組合やNPOがうまれはじめ、1960年代以降、数多くの協同組合が誕生していきました。また英語圏のカナダでも広がりをみせ、社会的経済法という法律も可決しています。

最後に中南米・アジア諸国での発展の事例もいくつか紹介されました。中南米では先進国に従属的になっている状態から自国の経済を取り戻すための動きがみられ、フェアトレードが盛んになっています。フェアトレードというと、日本では先進国と途上国の貿易という印象がありますが、南米では中流階級と弱者の連帯による、国内でのフェアトレードの動きもみられるそうです。そしてアジアの中では、韓国が先行。2006年にはアジア初となる社会的企業育成法が可決しました。このような動きは香港やフィリピンにも広がっていて、行政や企業と連携したさまざまな取り組みがはじまっているとのことでした。

事例のあとは、社会的連帯経済のさまざまな形態を説明していただきました。まず協同組合について。「共同で所有し民主的に管理する事業体を通じ、共通の経済的・社会的・文化的ニーズと願いを満たすための自治的な組織」と定義され、公正、連帯といった精神を重んじています。つぎに消費者生協や、社会的弱者への支援を目的として1980年代から台頭してきた社会的企業の各国の定義についても取り上げられました。そしてフェアトレードや産直提携、マイクロクレジットや地域通貨などの最近の活発になりつつある活動についても触れられました。

枝廣先生は、さまざまな形態の社会的連帯経済が世界中で発展していく中で、日本での取り組みで発展しているものが少ないことについても言及。産直や生協は発達しているものの、取り組んでいる当事者たちはそれが社会的連帯経済であるという認識がありません。また、一時期は数百種類もあった地域通貨も、いまは勢いがなくなっています。また、本来であれば地域でお金を循環させる役割を担うべき信用組合、信用金庫、労働金庫も、地域で集めたお金を地域で回すかたちにはなっていないのが実態です。

それはどうしてなのでしょうか。まず、日本では法制度がまだ存在しておらず、そもそもこの分野での研究も進んでいません。法制度以前に、仏教的な因果応報、武士道などの思想的な基盤という、日本人が持つ独特のメンタリティの問題もあります。非正規雇用や不登校など、社会システムから落ちこぼれることは「自己責任論」とされがちなのです。自分が主体性をもって構成している社会の問題なのだから、自分にも責任がある、という考えを持つ人が少ないことも、日本において社会的連帯経済が広がりにくい要因であると考察されています。

本の解説を一通り終えたところで著者の廣田先生にもSkypeで参加していただき、参加者の皆さんと質疑応答がおこなわれました。社会的連帯経済が発展している国々での具体的な事例から、今後日本で発展するためには何が必要なのかまで議論は多岐に渡りました。廣田先生はその中で、日本で発展するためには、国や政府主導ではなく、下からの動きによる法制度化を実現することが必要だとお話しされました。そのためには、他国から学ぶ謙虚な姿勢をもつことが大切なのだそうです。そして、学ぶ際の言語の壁や、初期費用がかかることへの覚悟、弱者との連帯意識が薄い日本人的価値観など発展へのさまざまな障害についても指摘をされました。

廣田先生いわく、社会的連帯経済とは「わたしたち市民、地球環境と協和していくさまざまな経済活動のこと」だそうです。そのようなみんなが幸せになれる理想的な経済システムが日本で広まるのはまだ少し先になるだろうとの見解でしたが、日本での今後の発展にも注目していきたいですね。

幸せ研の読書会は、「幸せ」「経済」「社会」をめぐるさまざまな課題について考え、対話する読書会です。課題図書の解説はもちろん、ディスカッションなどをおこない主体的に考えていきますので、理解をより深められるチャンスにもなります。もちろん課題図書を読んでいない人でも大丈夫。ぜひお気軽にご参加ください。ご案内はこちらの幸せ経済研究所のホームページから!

(POZIプランナー 伊藤恵)