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日本でブラック労働がなくならないのは、江戸時代につくられた「空気」のせいかも!?『日本資本主義の精神―なぜ一生懸命働くのか』読書会レポート

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幸せ経済社会研究所の第85回の読書会では、山本七平著『日本資本主義の精神―なぜ一生懸命働くのか』を課題図書として取り上げました。

本書が最初に出版されたのは1979年。40年前です。枝廣さんはまず、どうしてこのような古い本を取り上げたのかを説明されました。枝廣さんは、40年前に書かれたとはいえ、その内容には今も変わらない普遍的なものがあると言います。著者の山本七平さんの中には、戦前の日本がその根底に流れる精神をまるで「空気」のように意識することなく、その精神に突き動かされて戦争に突入してしまったのではという考察がありました。

著者が説く、江戸時代から続く日本人の労働観は、今も変わっていないと枝廣さんは指摘します。根底に流れる精神構造、つまりメンタル・モデルを知った上で続けるのならば問題ないけれども、知らないうちにそこに従うと、誤った行動をとる恐れがあります。外国人労働者の流入や人工知能の台頭で、日本の労働環境が大きく変わろうとしている今こそ読むべき本として本書が選ばれた、ということです。

さて、本の内容について。本書は「なぜ日本人は一生懸命働くのか」を、歴史を紐解きながら読み解きます。

まず、日本で労働者の多くが所属する「会社」は、日本では機能集団でありながら、一種の共同体として存在しています。共同体とは、自分自身がグループに属しているという認識があるもの。血が繋がっていなくても、血縁であるかのような形で作られていく集団です。そこではメンバーが一丸となることが優先されます。たとえばキリスト教では、仕事はアダムとイブが罰として与えられたものであり、労働は本来すべきものではないという認識ですが、日本の企業は社長をまるで神さま(社長)のようにあがめ、功績が共同体の序列になります。採用は共同体への資格審査であり、入社式は通過儀礼のようなもの。よっぽどのことがない限り追放されることはなく、実質的には解雇であっても、希望退職という形をとらされます。日本での仕事は経済行為ではなく、宗教行為のようなものなのですね。

また、日本と海外のビジネスでの大きな違いの一つに、話し合いの文化というものがあります。日本は契約よりも、話し合いを重視します。海外では仕事は契約がベースなので、ジョブディスクリプションに則って与えられた仕事をやればいいだけ。一方、日本の場合は業務の内容が曖昧。それは何となく空気を読んでわかりあえるから。そんな労働環境を外国人労働者は理解することができるでしょうか。やっていいことと悪いことが明文化されていない中、共生は難しいですよね。

今に受け継がれる日本人の労働観のベースにあるのが、江戸時代に活躍した、鈴木正三という禅僧と、石田梅岩という商人の二人の考え方だと著者は指摘します。

鈴木正三は、人間の内なる秩序、社会の秩序、自然の秩序と調和こそが大切であり、仕事での務めこそが修行なのだと説きます。欲からくる利潤の追求は悪としますが、修行の結果としての利潤は良し。経済的行為ではなく修行なのですから、ひたすら働くことが善徳ということになるので、鈴木正三の考えに則ると、「禅とエコノミック・アニマルは同じ発想」ということになります。

そして、石田梅岩。この人は商売と道徳を融合させることで、「士農工商」として、社会の最下層に置かれていた商人の地位を高めました。商売を仏の道と信じ、誠実に、合理性を追い求めるのが商人の道と説き、倹約を美徳としました。

日本では「ブラブラしている」状態にはネガティブなニュアンスがありますよね。それは、働かないということは、修行を行なっていないことのように見る気持ちがあるからなのですね。日本人が定年を過ぎても働きたがるのは、同じ精神構造からくるものです。

働くことそのものが「正しい道」ということで精神的な安定につながる。しかも、共同体への貢献は、成果主義ではなく、どれだけ一生懸命にやったかで評価される。日本人がほとんどの職場で、ひたすら決められたことをやれば利益が上がる時代であれば、それは最高の精神構造ですが、今はそうはいきませんよね。外国人労働者が増え、単純な作業をAIが担うようになる、さらに少子高齢化が進み、効率的な仕事が求められるようになる…。そんな変化に対応するには、日本の勤労意識を変える必要があるのではないでしょうか。

幸せ研の読書会は「幸せ」「経済」「社会」をめぐるさまざまな問題について知り、考え、話し合う場です。課題図書を持っていない・読んでいない人でも参加可能ですので、どうぞお気軽にご参加ください。ご案内はこちらの「幸せ経済社会研究所」のページから!

(POZIインターン 関山千華)