ホーム幸せ経済社会研究所経済には、そもそもSDGs的な発想があったのです!「幸せのための経済学 ―効率と衡平の考え方」読書会レポート

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経済には、そもそもSDGs的な発想があったのです!「幸せのための経済学 ―効率と衡平の考え方」読書会レポート

第99回の読書会の課題図書は「幸せのための経済学 ―効率と衡平の考え方」。私たちがつくりたい経済ってどういう経済なんだろう。そう考えるときに、単に思い付きではなくて経済学で大事にされている考えを踏まえながら考えていけるような力をつけられれば。そんな趣旨で、枝廣先生は本書を課題図書にされたとこと。確かに、「経済」という言葉は頻繁に使いますが、それが何かとはパッと説明できませんよね。

著者による経済の定義は、「多様な好みや価値観をもつ人々が、限りある資源を用いてモノやサービスを生産し、分配し、消費するシステム」。そして、その目的はというと、「参加する人々の福祉を高めること、人々がよい生を実現すること」なのだそうです。あれっ?経済を語るときに必ず出てきそうな「お金」が入っていませんね。

経済を考える上で大事なものを理解するために著者が例を挙げたのは、2010年にチリで起きた鉱山落盤事件。33人が鉱山の中に閉じ込められ、69日後に全員が生還したという事件です。危機的な状況から全員が生還できた要因は、リーダーの指揮のもとでルールを決め、わずかな食料と水を少しずつ分け合ったこと、それぞれの役割分担ができていたこと、そして誰一人取り残さないという意志のもと、弱っている人から先に救出させたことでした。

チリでの事故における、閉ざされた状況で手元にある食べ物や水が限られていたという状況は、地球環境において資源の制約があることと同じようなものだと言えます。制約がある中で生き延びていくためには、限られた資源を効率的に使うこと、そしてルールを決めてそれに従って分配することが大事。私たちが地球上で持続可能に生きていくためには、チリの事故から生き延びた人たちのように行動しないといけない、という解説はわかりやすくて面白いですね。

限られた人たちが富を独占する状況を変えて、もっとみんなで分配しないといけないという考えは、SDGsでいちばん大事にされている精神「誰一人取り残さない」にも現れていますね。

これまでの社会では分配の仕方よりも、経済全体のパイを大きくすることで分配量を増やすことばかりが注目されてきました。分配の仕方を考えるのは本来政治の役割ですが、分配の仕方を変えるということは、これまで多くもらってきた誰かにガマンしてもらわないといけないので、選挙を大事にする政治家はなかなか言いづらい。そういうこともあって、政治セクターも経済セクターといっしょになってパイを大きくして、みんなの取り分を多くしていく動きをする傾向にあったのです。ところが地球の資源には限りがありますし、生産で生じる温室効果ガスや廃棄物を吸収できる量にも限界があります。制約のある中でどう分配の仕方を考えていくかが、これから大事なことになっていくのではないでしょうか。

経済のおおまかな仕組みがわかったところで、書籍のタイトルに入っている「効率」と「衡平」について。

効率という点でいうと、労働に対する報酬に何らかの格差を設けることが不可欠だと筆者は述べています。それは、努力して働いても怠けていても同じ報酬だとすると、誰も真面目に働こうとはせず、経済システム全体としての生産が低下し、誰もが損失を被ることになるからだそうです。いまなにかと格差が問題となっているので、報酬の格差はどこまでなら許されるのか、というところは悩ましいですね。

そして、平衡。ふだんあまり使わない言葉ですが、要は、釣り合いがとれているということ。単純にどこかが多くてどこかが少ない、というのではなく、バランスがとれている状態です。

平衡が保たれた分配を考える上で大切なのが、それぞれの人が分配されたものを「実際に使えるかどうか」という視点。同じものでも、個人の属性やしゃかい的な環境で使えるかどうかは変わってきますよね。たとえば自転車。自転車をもらっても身体的に運転できないとか、道路が整備されていないといったことがあると活用できません。福祉や全体の幸福を考えた場合、分配する物やサービスの質や量だけではなく、各個人の特性や社会的な環境を考えないといけないのですね。

経済のしくみから始まった話が、幸福をどう実現するか、という話につながっていきましたね。お金もビジネスも、経済の一部でしかなく、また経済も、地球、そして社会の中の一部のできごとでしかありません。そもそもから考えることで、本当に大切なことは何なのかを考えることにつながるのだなあと考えさせられた読書会でした。

幸せ研の読書会は「幸せ」「経済」「社会」をめぐるさまざまな問題について知り、考え、話し合う場です。2020年4月以降はオンライン開催となりましたので、遠方在住の方も参加可能となりました。ご案内はこちらの幸せ経済社会研究所のページからご覧ください。

(POZI サステナビリティ・プランナー 丸原孝紀)